黒崎播磨2024年度シーズンレポート②
2024年度の黒崎播磨陸上競技部は、マラソンの日本トップチームのポジションを確立した。その一方でニューイヤー駅伝は14位と、チーム最高順位の4位を達成した前年から大きく順位を落としてしまった。田村友佑の欠場もあったが、チーム全体の課題もはっきりした。しかし25年度は3位以内を目標に掲げる。主要区間の選手が故障などなくピークを合わせ、若手の中から成長する選手が現れれば、目標が現実味を帯びる。黒崎播磨の24年度シーズンを①(マラソン)、②(駅伝)に分けて振り返る。
最長区間の細谷、インターナショナル区間のシトニックは力を発揮
マラソンでチームの力を見せたのに対し(黒崎播磨2024年度シーズンレポート①)、25年元旦のニューイヤー駅伝は14位と、前年の4位(チーム史上最高順位)から大きく順位を落としてしまった。
1区は悪いスタートではなかった。新人の松並昂勢は、区間賞から19秒差でタスキをつないだことで、「今の力は出せた」と澁谷監督からも合格点を付けてもらえた。
2区の最長区間ではエースの細谷恭平が区間8位、7位にチームを浮上させた。
3区は近年、田村友佑が走ってきたが、今回は故障の影響で出場できなかった。2年目の福谷颯太が任されたが、田村友佑の代わりは若干荷が重かった。区間12位で10位に後退した。
4区のインターナショナル区間はシトニック・キプロノが区間4位でチームは再度、7位に浮上した。23年が区間6位、24年が区間2位だったシトニックの安定した強さは、黒崎播磨の大きな戦力になっている。
インターナショナル区間のシトニック、最長区間の細谷、前半のスピード区間の田村友佑、そして5区の土井大輔が、黒崎播磨躍進の原動力となってきた。しかし25年は、黒崎播磨が力を発揮する区間配置ができなかった。
田村の欠場と、土井の不振の原因は?
14位に後退した一番の原因は、1500mからハーフマラソンまで、4種目のチーム記録を持つ田村友佑の故障欠場だった。9月29日のベルリン・マラソンから11月3日の九州実業団駅伝、同23日の八王子ロングディスタンス10000mと、マラソン後のスケジュールに若干無理があった。12月中旬に左大腿骨の疲労骨折が判明し、入社後初めてニューイヤー駅伝に出られなくなった。
チーム状況が良くなかったことも、田村友佑の故障に影響したかもしれない。九州実業団駅伝では土井の状態が上がらず、最長区間の2区(18.3km)を田村友佑が走ることになったが、そこの負荷が予定外だった。
ニューイヤー駅伝5区は土井が走るべき区間だったが、2年目の前田義弘が任された。しかし区間26位。3区の福谷と同様に10位に後退し、入賞ラインとの差も250mくらいまで広がった。
6区の田村友伸は区間23位で1つ順位を落とし、7区に回った土井は区間18位で、14位でのフィニッシュとなった。
土井はシーズンの流れが良くなかった。大阪マラソンで2時間6分台を出した23年度は、黒崎播磨の練習パターンを手の内にしたと思われた。だが24年度は12月の福岡国際マラソンで12位、2時間12分53秒と振るわなかった。
その一因として土井は、トラック種目の走りを挙げた。
「1つ1つのレースで動かし切れませんでした。練習も含め追い込むべきところで、追い込み切れませんでしたね。チームの練習の流れで状態を上げていくべきところで、できなかった」
澁谷監督によれば、マラソンを走った選手も春から夏のトラックで、自身のスピードを上げておくことが重要になる。土井はレース中も集団の後方に位置するなど、積極的な姿勢を持てなかった。
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1秒差の2位だった九州予選など、25年度に向けて明るい材料も?
悪い点が多かった駅伝だが、九州地区予選は旭化成と1秒差の2位。アンカーの福谷は前日本記録保持者の相澤晃(旭化成)と、同タイムで区間賞を獲得した。
「チームの3連覇がかかっていましたが、(相澤相手では)負けても仕方ないところ。いきなりスパートするとか、相手に力を出させない走りをするしかない」と臆せず臨んだ。
結果的に僅差で敗れたが、健闘と言ってよかった。
ニューイヤー駅伝も悪いことばかりではなかった。1区の松並が区間賞と19秒差の15位は、前述のように合格点を付けられた。3区の福谷も区間12位ではあったが、日本トップレベルのスピードランナーが集う区間だったことを考慮すれば健闘と言えなくもなかった。
田村友佑と土井の主力2人が、あるべきシーズンの流れに乗り、福谷、松並、前田ら若手が成長すれば、26年大会は3位以内も期待できる。そのためにも、各選手がチームの練習の流れを理解し、それに乗ることが重要になる。
TEXT by 寺田 辰朗