黒崎播磨のアスリートたち 第6回《中村優吾》

高卒4年目の中村優吾の成長が、黒崎播磨の駅伝に大きく影響する。当初はスピードを競り合いに生かす走りが期待され、ニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)でも2年目に1区(12.3km)に抜擢された(区間34位)。しかし3年目は単独走が求められるアンカーの7区(15.5km)を任されている(区間18位)。中村が黒崎播磨の強化スタイルをどう活用して、駅伝メンバーに食い込んできたのか。さらにステップアップするために、何が期待されているのか。

 

●ニューイヤー駅伝は2年目で1区、3年目でアンカー

中村優吾は21年元旦のニューイヤー駅伝に、入社2年目で出場した。チームは最終的には17位だったが、6区で9位に上がるなど翌年の6位入賞につながる力を見せていた。
そのなかで中村は1区で区間34位だった。区間賞は東京五輪5000m代表になる松枝博輝(富士通)で、中村は36秒差。中村は高校3年時の5000mは14分06秒19で、その年の高校リスト20位だった選手。1区はタイム差がつきにくい区間ではあるが、高卒2年目選手としては健闘と言っていい。
「1年目は自分勝手にやって故障ばかりしていました。それを反省して2年目は監督、トレーナーとしっかり相談するようにして、故障しなくなって練習が継続できるようになったんです」
九州実業団駅伝4区(9.5km)で区間3位。区間新を出した村山謙太(旭化成)には40秒差をつけられたが、目良隼人(三菱重工)らに区間タイムで競り勝って自信をつけた。ニューイヤー駅伝1区も「力は出し切った」と感じていた。
しかし入社3年目は集団走の可能性が高い前半区間ではなく、九州実業団駅伝6区(10.9km)、ニューイヤー駅伝7区(15.5km)と単独走のシーンが多い区間に起用された。澁谷明憲監督は「スピードだけじゃなく、構成能力が高くてペース配分が上手いですね。体は大きくないですけど、体全体を上手く使えるので単独走もできる」と、後半区間に起用した理由を説明する。
黒崎播磨には定番のメニューがいくつかあり、選手はそこに合わせる能力が求められる。練習内容や中・長期的な流れも加味して駅伝メンバーが決められていくが、中村は単独で走る10月の15km走で「しっかりまとめて走れる能力を示した」(澁谷監督)。11月初めの九州実業団駅伝6区は区間2位。10000mで日本代表経験のある鎧坂哲哉(旭化成)に23秒差の好成績を収めた。
ニューイヤー駅伝本番は7区区間18位。3区の田村友佑、4区の細谷恭平、5区の土井大輔が快走し、中村は5位でタスキを受けた。6位は優勝候補のトヨタ自動車で、大石港与は3区区間賞経験がある日本のトップランナーだ。同タイムで中継所をスタートし大石には引き離され、その後は単独走を向かい風の中ですることになった。
54大会ぶりの入賞(8位以内)がかかっていただけに、「入賞を逃したら戦犯になるプレッシャー」があった。最後は6~9位が8秒差内に固まる緊迫した展開になっていた。だが中村は「練習はできていたので普通に走れば大丈夫」と落ち着いて走った。追い上げられはしたが単独走の力を示した。

●正念場の4年目に“何をすべきか”

2年目に前述のように、故障をしないで練習を継続できるようになった。当時から朝練習の最後10分間や、ジョグの日など選手に任される練習で、中村は「考えて走る」ことをしっかり行ってきた。ピークを合わせるべきレースや、チームで一緒に行うポイント練習(週に2~3回行う負荷の強いメニュー)との組み合わせ方、自身の体調などを考慮して練習を決めていた。
「(細谷、田村友佑、土井の)3人はお手本になるので、一緒にやる練習は食らいつきます。15km走など個人走でも強さを見せないと、駅伝メンバーに入れません」
今季(22年)は4月に5000mで13分55秒03と、自身初の13分台を出した。中村自身は成長しているが、駅伝で主力3人に頼らず6位以内を達成するには、小田部真也や田村友伸、中村らがもっと成長する必要がある。
中村は高校1年時には国体少年B(高校1年生と中学3年生カテゴリー)3000mで7位と、全国入賞した実績もある。入社2年目の1区は健闘だったが、3年目の7区は駅伝としては合格点の走りでも個人では評価できない。区間賞の土方英和(Honda)には2分02秒差をつけられたのだ。
澁谷監督は「中村はさらに目標設定を上げる必要がある」と言う。今年の夏に故障したこともあり、選手自身が考えて行う部分の練習が抑えめの内容になっていた。
「3年目までは厳しく言いませんでしたが、今年で4年目ですし来年は同学年の、学生トップレベルの選手も入社してくる。何をやりたいのかをもう一度、真剣に考えないといけない時期に来ています」
関東の大学は年齢が近い選手同士が練習から競り合い、記録を出しやすい競技会の数も多い。九州の実業団選手と安易に比較はできないが、中村の13分55秒03は22年の日本人学生リストで60番前後である。澁谷監督は期待も込め「13分40秒は行ってほしい」と言う。
黒崎播磨なら関東の大学以上のことができる。中村自身もそこは自覚し、黒崎播磨の駅伝に取り組むことで自身を成長させようとしている。
「6位入賞は主力3人が順位を上げて、他の選手はそれを落とさないように走っただけです。全員が最低でも区間ひと桁順位でタスキをつながないと、3位以内までは行けません。主力3人だけじゃないクロサキを作っていくための1人になりたい」
選手に任された部分の練習を、どこまで主力3人に近いレベルにできるか。4年目の中村が正念場を迎えている。 TEXT by 寺田 辰朗

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